Vol.8「儀式」

 

その夜は新月だった。

これから始まる新しい流れを指し示しているのだろうか?
澄んだ夜空、暗闇に星が瞬く。

深く埋もれてしまうほど柔らかいベッドに包まれる様に体を横たえたものの、
寝付けずに窓から見える星明かりをぼんやりと見ていた。

この館の主、魔女の名は「レオノーラ」。

彼女はとても話好きらしく、初対面の私にも気さくに打ち解けてくれた。

館は冬支度を終えたところだった。
薪の燃える匂いが体の芯、心まで暖めてくれる。
居心地の良い部屋。桃の香りのする東洋のお茶とクッキーを振舞ってくれ、話も弾んだ。

私は生い立ちから父と仕えるはずだった魔女の死、旅立ちからここまでの道程を洗いざらい話し尽くした。その上で初対面で不躾かと躊躇したが、思い切って自分の病のために力を貸して欲しいと頼んだ。

「実は私もあなたと同じなのよ。」

黙って私の話を聞いていた魔女はお茶のカップを置いてゆっくりと口を開いた。

「私には今、使い魔はいないの。
あなたとは逆に私の使い魔は不治の病に冒され、私を置いて先に旅立ったの。
流石の私も暫くの間、立ち直れなかった。

そんな私にまた旅立ちを見送らせようと言うのね。

いいでしょう。私の直感だけれど、あなたには何かの縁を感じ取る事ができる。
これも何かの導きかも知れないわね。盟約を結びましょう。」

余りの話の早さに驚きと喜び、安堵が心の中で交錯し、呆気にとられていたが、そんな事はお構いなしに魔女は部屋の床に魔法陣を描き始めた。この場で盟約の儀式を執り行うつもりらしい。

魔法陣が描かれ、周りをロウソクの灯火が囲む。
中央に立つよう命じられた私は静かに目を閉じた。
何語とも取れぬ言葉で呪文を唱え始める魔女。

周囲の空気が揺らめき始め、次の瞬間、空気が渦を巻き光の束と共に風が私の体を浮かせた。
仰向けに宙に浮いた私の体の隅から隅、耳の先から尻尾の先まで力が漲るのが分かる。

光に貫かれて体を駆け巡った力から私の分身が抜けて魔女の元へ。
魔女は小さくなった私の分身を両手で包む様に捉え、ゆっくりと取り込んで行った。

風と光が徐々に収まり、私の体も床へそっと置かれた。

「今、この時からあなたは私の使い魔です。この盟約を心に刻み、死が分かつまで共に生きましょう。」

彼女の使い魔となった私に恐れるものはなくなった。
彼女と彼女へと繋がるここまでの道程で出会い、ここへと導いてくれた全てのものに心から感謝をした。

話し込むうちに魔女は言った。
「今日はもう遅いから泊まって行くと良いわ」
窓の外を見ると既に日は暮れていた。

 

 

今夜も館の扉が開かれる・・・。

その占いの館の名は「賢者の石」。

 

興味を持たれた方もそうでない方も、一度「占い 賢者の石」を訪れてみて欲しい。

きっと貴方にも光芒が降りて来るはず・・・。

 

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