昨夜、信じられないことが起こった。
愛猫2号のソル。通称、王子。
その王子が、自ら私のところへやってきて、
PCの前に座る私の膝に乗ってきたのである。
しかも、甘えてきた。
猫を飼っていない人には、
「それがどうした」という話かもしれない。
しかし、これは我が家にとっては一大事なのである。
まず、王子は自分から甘えに来ること自体が珍しい。
そして、膝に乗るなどという行為は、
大人になってからはほぼ記憶にない。
おそらく10年ぶり。
いや、もしかすると初めてかもしれない。
あまりにも珍しいので、
「どこか具合でも悪いのか?」と本気で心配した。
食欲はあるか。
どこか痛そうにしていないか。
様子がおかしくないか。
こちらは完全に動揺していた。
しかし当の本人は、
「何か?」という顔をしている。
そういえば、最近の私は、
新入りのマルクにかかりきりだったかも知れない。
もし猫に人間のような感情があるのなら、
「最近、ちびっ子ばかり見ているようだな」
「たまには私も甘えてみるか」などと思ったのかも知れない。
もちろん、ネコ・サピエンス研究※において、過度な擬人化は禁物である。
研究者の願望を研究対象に投影してはならない。
もっとも、本人に確認する術はないので、真相は王子のみぞ知る。
考えてみれば、人間も猫も似たようなものかもしれない。
長く一緒にいると、
「この子はこういう性格」
「この人はこういう人」
と、わかったような気になってしまう。
ところが、10年経って突然、今まで見たことのない顔を見せる。
人間なら、「人は変わる」などともっともらしいことを言うかも知れない。
しかし、猫の場合は、「王子が膝に乗った!」の一言で済んでしまう。
それでも、私にとっては十分すぎるほどの事件だった。
20年以上、人間を観察してきたが、
10年以上観察してきた猫にも、まだ知らない一面が残されていたらしい。
ネコ・サピエンス研究も、なかなか奥が深い。
もっとも、これが最初で最後になる可能性も十分ある。
何しろ相手は王子である。
今夜から再び、
「私はそんなことをする猫ではありません」
という顔に戻っていても別に驚かない。
※ネコ・サピエンス研究家
現代錬金術師の傍ら、人間という生き物を20年以上観察し続けてきた結果、
いつの間にか「ホモ・サピエンス研究家」を名乗るようになった。
なお近年は、研究対象を猫にも拡大。
この新分野は「ネコ・サピエンス研究」と呼ばれる。
ただし、研究対象は被験者としての自覚がなく、協力的とも限らない。
また、昨日までの研究成果が翌日には覆されることも珍しくない。
